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セポイの乱ってこんなに面白かったのか!? 長崎暢子『インド大反乱一八五七年』

どうも。人としてもうダメな馬頭です。

それはともかく。

長崎暢子『インド大反乱 一八五七年』

『インド大反乱 一八五七年』

(長崎暢子。中央公論新社。中古新書606。1981年。480円。232ページ)
目次
反乱の予兆
I 反乱の社会的背景
II 反乱政府ーーデリー、五月〜九月
III 反乱と農村社会
IV 各地の反乱
結び
あとがき
主な参考文献


かつて「セポイの乱」と呼んでた19世紀インドでの反乱は、現在では「インド大反乱」と呼ばれていますが、そのインド大反乱を解説した本です。著者はインド近代史の研究者・長崎暢子(ながさきのぶこ)氏。

「セポイ」とは「シパーヒー」のことで、オスマン朝においてシパーヒーが常備軍の騎兵で騎士に相当するようなものだったのに対して、19世紀のインドでは、一定のカーストに所属するイギリスの東インド会社によって傭兵として雇用されていた人々です。これらの人々はムスリムだけでなくヒンドゥー教徒も含まれます。当時のイギリスは20万ものシパーヒーを雇っていました。このシパーヒーが使ってたエンフィールド銃の弾丸の薬包に塗ってある油が牛と豚の油脂だというので、ヒンドゥー教徒にとっては神聖な牛の、イスラム教徒にとっては汚れた豚の、その油を口にするという冒涜・不浄行為は宗教的な禁忌を犯すこととなるので、非常に怒って反乱を起こしてしまいます。
もっとも、そういう噂が広まってしまってただけで実際に油を塗ったものが採用されてたわけじゃないのですが。
五月に発生した反乱は、シパーヒーたちがデリーで細々と暮らしていたムガル皇帝を担ぎだして旗印にしたことで、本格的な反乱となり、デリーでの戦闘は九月には終わってしまいますが、その後も各地で反乱は個別に継続され、1859年まで続きます。
この本では、前半はこのデリーでの出来事を中心に語り、後半をインドの諸制度など発生原因などについてと各地でのその後の状況などを語っています。
それにしても、この本、はじめは何気なく手にとったのですが、その冒頭の部分からして引き込まれるものがあり、その後の展開もなんだか滾るというか、むちゃくちゃ面白くて最高です。序章の「反乱の予兆」の語り口なんか、まるでアメリカの破滅到来もののSF小説のような「来るぞ来るぞ」というワクワク感に満ちています。反乱に登場する人々もそれぞれキャラが立ってていい味出してますし、悲愴な雰囲気での戦いも、破綻していく過程も、どれもが燃えるんですよね〜。この反乱は「物語」として凄くよく出来てる感じがします。
そういや、最後のムガル皇帝となるバハードゥル・シャー2世って、「グイン・サーガ」のゴーラのサウル帝のモデルなのかな? かなり似通ってるような気が。

インド史なんてほとんど知りませんでしたが、これはいい本ですね〜。ここだけ読んでも理解でき、当時のインドの状況の説明などもわかりやすく、いままで抱いていた「インドの傭兵の反乱」というイメージを正してくれました。それにカースト制度への単純な理解も見方が変わったし、明治維新や太平天国の乱に並ぶ19世紀のアジアでの革命運動の一貫という理解も違うなーと思うようになりました。確かにアフガニスタンやクリミア戦争との繋がりとかも視野に入れないといけませんね。
なんかインド史ももっと手を出していかないといけないな、と思いました。そういや「ムガル皇帝歴代誌」もまだ買ってないし、いい機会だから買おうかな。



「セポイの反乱」
「インド兵(セポイ)の反乱―インド民族解放運動の歴史 (1955年) (青木新書)」
「ムガル皇帝歴代誌」


参照サイト

インド大反乱(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%8F%8D%E4%B9%B1
スィパーヒー(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC
ムガル帝国(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AC%E3%83%AB%E5%B8%9D%E5%9B%BD
バハードゥル・シャー2世(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC2%E4%B8%96
マンサブ(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%96
マンサブダーリー制
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%96%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%88%B6
エンフィールド銃(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E9%8A%83
ラクシュミー・バーイー(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BC

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「関ヶ原島津退き口―敵中突破三〇〇里 (学研新書)」
「ムガル帝国の興亡 (イスラーム文化叢書) 」
「世界の軍用犬の物語」



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