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太平天国の乱におけるキリスト教はどういうものだったのか? 菊池秀明『太平天国にみる異文化受容 世界史リブレット65』

どうも。馬頭です。
来月、「皇帝と公爵」と「47RONIN」は観に行くつもりですが、「ゼロ・グラビティ」はどうしようかなー。

それはともかく。

菊池秀明『太平天国にみる異文化受容 世界史リブレット65』

『太平天国にみる異文化受容 世界史リブレット65』

(菊池秀明。山川出版社。世界史リブレット65。2003年。729円。90ページ)
太平天国運動と近代日本
洪秀全のキリスト教受容と中国伝統文化
拝上帝会の創立・発展と中国民衆文化
太平天国とヨーロッパ


世界史リブレットの一冊で、清朝末期の地方反乱、太平天国の乱を扱ったもの。
洪秀全をはじめとして、当時この乱に参加したり見聞した中国人たちが、キリスト教をどう解釈して受け取ったのか、が解説されています。
著者は中国近代史が専門の東洋史学者・菊池秀明氏。

太平天国の乱の指導者・洪秀全は、別にキリスト教の宣教師から教えを受けたわけでもなんでもなくて、もともと科挙受験生なのに科挙に失敗して失意の中で高熱にうなされ、天啓を得て、キリスト教系の拝上帝会をはじめたわけですが、その経緯もあってキリスト教理解はかなり誤解に近いようなものだったそうです。神のことは上帝とし、周代まではちゃんと上帝を崇めてたのに、秦の始皇帝の時代から変になった、と昔から存在するものとして、中国化した受け取り方をしてます。儒教的な理解で解釈し、儀礼もほぼ中国の祭礼のまんまだったりと、キリスト教かどうか怪しい感じなのが面白いですね。
また、客家出身の洪秀全は、その客家人脈で初期信者を増やしたので、客家的思想も入っているとのこと。大家族という形態の統一的な組織作りにもそれが反映されて、分裂的な白蓮教徒とは違う点だとされます。
あと、太平天国の乱というと黄色い服と旗というイメージがありますが、どうやらそうではなかったようで、色とりどりの派手な色彩の軍装だったとか。服は紅い服だし、旗も縁取りが五行思想に則って五色のパターンがあったといいます。てか、五行思想入ってる時点で・・・。
太平天国軍は結構規律が良かったらしく、清軍の方が略奪や殺人をやりまくってたみたいですね。もっとも、後期になると太平天国が衰退して、新たに質の悪い人間を入れて補強しなきゃならなかったので、そういうやつらは悪さをしたそうです。

それにしても、太平天国の乱って、南京を陥落させたあと、国造りに入りますが、国名がそのまんま「太平天国」なんですね! そうか、なんかなんとなく勘違いしてたけど、よく考えたら宗教団体としては「拝上帝会」が団体名だったな。

この本ではこの時代の中国南部の民族的対立のようなものも知れて面白かったです。客家は中原の方から広西・広東にやってきた漢族の人たちですが、あとからきたため良い土地は手に入れられなくて貧しかったそうで、土人といわれるチワン族の人たちと同様に小作人などして生きてきたそうです。この地域は客籍という早い時期に移民してきた漢族の人たちが、良い土地を占有して大きな勢力を持ち、他の勢力と対立していたようです。こういう移民に侵蝕された地域だったというのも興味深い。てか、チワン族にとってははた迷惑な。そして、太平天国の乱にもたくさん参加しています。指導者層にも多い。

そうそう、これ読んでてはじめて楊秀清という人のことを知りましたが、元炭売りの半任侠者の客家で、反乱指導者の側近的存在で、東王で、神がかりするシャーマンで、難病持ちで、ヒーラーで、隻眼で、反乱の実質的指導者になって、最終的に野望のために誅殺される、というどう考えても属性盛り過ぎキャラでした。しかも、太平天国の幹部たちは、それぞれ自分は何千歳だとか言ってたらしく、楊秀清も九千歳という設定でした。中二病か!?

ともかく、太平天国の乱に関する面白い本でした。今度、もっと詳しいの読んでみたいですね。

幕末に高杉晋作とかが中国に渡ってますが、そこで太平天国の乱を儒教的な意味で上に逆らう良くないものとし、さらにキリスト教運動だと知って危険だと思ってたようです。こうしたことはいろいろなルートで日本に伝わり、はじめのころは滅満興漢という明朝の復興運動だと思ってたけど実は島原の乱みたいなものだと知り、ショックだったらしい。よく、アヘン戦争が日本に衝撃を与えた、みたいな話がありますが、それよりも太平天国の乱の方が与えたショックは大きかったのでは?

参照サイト
世界史リブレット - 山川出版社
https://www.yamakawa.co.jp/product/common/&cat_209=209
太平天国の乱(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E5%A4%A9%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B9%B1
洪秀全(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%AA%E7%A7%80%E5%85%A8
拝上帝会(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%9D%E4%B8%8A%E5%B8%9D%E4%BC%9A
客家(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%A2%E5%AE%B6
土客械闘(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E5%AE%A2%E6%A2%B0%E9%97%98
チワン族(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%AF%E3%83%B3%E6%97%8F

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