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虚構が通説となった長篠の戦いの実態を読み解く。藤本正行『長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因』

どうも、サラサラの鼻水が止まらない馬頭です。
そういや、ソチオリンピックが近づいてきて、テレビでロシアの映像がいろいろ流れたりする機会が増えてきましたね。変なのやらないといいですが・・・。できればロストフの映像が見たい。

それはともかく。

藤本正行『長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因』

『長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因』

(藤本正行。洋泉社。歴史新書y 001。2010年。840円。237ページ)
はじめに
序章 通説上の長篠の戦いとは?
第一章 鉄砲から見た信長の戦歴
第二章 知られざる火縄銃の構造と威力
第三章 武田騎馬軍団の実像
第四章 実録・長篠の戦い1 決戦前の動きと戦力分析
第五章 実録・長篠の戦い2 四百三十五年前の決戦を再現
第六章 勝頼の敗戦処理と信長の宣伝上手
第七章 長篠の戦いは世界的「戦術革命」だったのか?
終章 その後の織田家・徳川家・武田家
付録一 長篠合戦における織田の銃隊の人数について
付録二 長篠の鉄砲戦術は虚構だ
おわりに
主な参考文献


長篠の戦いについて、いわゆる「鉄砲三段撃ち」が俗説で、実際の戦いはこうだった、ということを解説した本です。著者は日本軍事史・風俗史が専攻の戦国史の研究者・藤本正行氏。

通説の元になった情報の由来を調べ、それが胡散臭いものだったことを指摘しつつ、戦国時代の常識に照らし合わせて、実際にはどうったのか、ということを突き詰めていき、長篠の戦いの実態を描きます。
そして信頼できる史料から、鉄砲の数は「三千挺」ではなく、千挺+αで、一列に並べて一斉射撃ではなく、戦場の一部に配置されていて、それぞれが個別に射撃してた、ということがわかるそうです。三段撃ちは、軍事的天才の信長が発明したみたいなイメージがあるけど、そもそも三段撃ちそのものがなく、鉄砲の使い方も含め長篠での戦い方は、当時の軍事技術の集積以上のものでしかないとのこと。武田側も騎馬軍団的なものは存在しなかったろうとの話もあり。
特に天才・織田信長の先進的な鉄砲隊と、愚将・武田勝頼の保守的な騎馬軍団の対決、という分かりやすすぎるイメージが、分かりやすすぎるから浸透しすぎというのは納得。
武田勝頼の長篠での戦い方は、南北に行動を制限された土地で、織田・徳川の別働隊に後背の長篠城・鳶ノ巣山方面を脅かされたため、前方の信長の防御陣地に進むのは本隊が無傷の武田軍からすれば、別に無謀で愚かな行動というわけじゃなかったとのこと。

ちょっと書き過ぎなところもありますが、史料に基づいた分析は的確で、当時の常識的な感覚を踏まえた戦国時代の人びとの行動を読み解く内容はたいへん納得がいくものばかりでした。三段撃ちは無かった的な話は知ってましたが、長篠の戦いが具体的にどういった感じだったのか、というのがやっと分かってきました。いわゆる「通説を覆す」系の本の体裁ですが、そういうのを抜きにしても読み物として非常に面白く、丁寧で読みやすかったです。藤本氏は、1970年代からずっと長篠の戦いで三段撃ちは無かったと言ってたらしいのですが、フィクションのみならず歴史書でも通説のイメージが強固でそうとう不満が溜まってたみたいで、文章のはしばしにそれが出ていますね。その文体がちょっとねちっこいのがアレですが、よほど不満だったんでしょうwww。まあ、多分今後もフィクションの世界では信長のキャラ立てのために通説がまかり通るでしょうけど、こういう手に取りやすい新書で広めてくれるのはありがたいですね。

巻末には付録として藤本氏が過去に書いた長篠の戦いに関する記事がふたつ収録されています。

ところで、この本ではじめて知りましたが、火縄銃の玉込めなどに使う㮶杖が非常に折れやすく、何本も換えを持って行動していたそうです。さすがにそこまで描いてる人っていないなぁ。
あと、柵を作る場合、足場にしてよじ登られるのを防ぐため、下の方の横木を付けないで立てる、とか。確かに長篠の戦いの絵を見るとそうなってるんですよね。昔、あの絵を見た時、柵が変だなーとか思ってたけど、そういう工夫だから当然だったのか。
あ、あと、長篠の戦いの別名として知られる「設楽原の戦い」の設楽原も実は不正確な名称が近代になって付けられたもので、「あるみ原(有海原)」が正しいとのこと。



「長篠合戦と武田勝頼 (敗者の日本史) 」
さて、最近出た本で、長篠の戦いを扱ったものがあるので、次はこれも読みたいですね。
「信長の戦争 『信長公記』に見る戦国軍事学 (講談社学術文庫)」
「鎧をまとう人びと―合戦・甲冑・絵画の手びき」
それに、藤本氏は他にも面白そうな本を出してるのでそっちも読みたい。



参照サイト
株式会社洋泉社
http://www.yosensha.co.jp
長篠の戦い(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E7%AF%A0%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
火縄銃(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E7%B8%84%E9%8A%83
槊杖(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A7%8A%E6%9D%96
藤本正行(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%9C%AC%E6%AD%A3%E8%A1%8C

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