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混沌とした時代を生き抜いた宦官の生涯。凌海成&余斌華&李衛東『最後の宦官 溥儀に仕えた波乱の生涯』上下巻

あけましておめでとうございます。
去年は全然記事書けませんでしたが、もうちょいなんとかしたい馬頭です。

それはともかく。

凌海成&余斌華&李衛東『最後の宦官 溥儀に仕えた波乱の生涯』上巻

『最後の宦官 溥儀に仕えた波乱の生涯』上巻

(凌海成&余斌華&李衛東。河出書房新社。河出文庫。1994年。640円。341ページ)
目次
静海
都の風
載涛府
紫禁城へ
神秘の紫禁城
皇帝溥儀
動乱の紫禁城
清朝の終焉


中国の清朝末期、貧困から宦官を目指し、皇族や溥儀に仕え、清朝の滅亡を生き抜き、日中戦争や文化大革命をも乗り越えるなど、波乱に満ちた人生を歩んだ人物、孫耀庭(スンヤオチン)の生涯をインタビューに基いて描くドキュメンタリー。著者は歴史作家で仏教研究家の凌海成。余斌華と李衛東は翻訳者。

どうも一昨年くらいから幕末・維新とかの旅行記・異文化交流モノが気になりはじめてたんですが、その流れでなぜか清朝末期あたりの歴史も気になってきて、そうして読み始めたのがコレだったわけですが、予想以上に面白かったです。
孫耀庭は清朝の「最後の宦官」と言っても本当に最後のひとりかどうかわかりませんが、生き残って取材を受けて貴重な証言を残している人物のひとりだそうです。
本の内容も歴史の本とか研究書とかいうのではなく、ちょっと小説風にした感じで、ホントに全部本人が語った通りなのかは不明ですが、読み物としては読みやすく大変面白く作ってあります。
孫耀庭が宦官になったのは、彼の家が非常に貧しく不遇なためで、少年の段階で切り取って宦官を目指します。しかし、時代はまさに清朝末期。なんと切った後になって、数日前に宣統帝が退位し、中華民国が建国されたことを知るのです。しかも宦官の採用は無くなるとのこと。よりにもよってこのタイミングで。(笑)
しかし、その後、叔父のツテを辿って、溥儀のおじに当たる皇族・載涛(ツァイタオ)に仕えることになり、北京での宦官としての生活がはじまるのです。彼はその後も皇太妃・端康(トワンカン。温靖皇貴妃。光緒帝の側妃)に仕え、さらにはついに皇帝・溥儀に仕えることになります。溥儀に仕えることになったのは、1922年に溥儀が皇后に婉容、妃に文繍を迎える時で、婉容を端康が推薦したことが関係しています。端康は溥儀に対して干渉してきましたが、その流れで新皇后の監視役としての役割を期待されてのことでした。こうして宣統帝・溥儀の近くで働き、その退位の時まで仕えることになります。
もちろん、孫耀庭の話はそれまでではなく、宦官として解雇され、普通の生活をしていかなくちゃならなくなってからのことも書いてあって、それがまた無茶苦茶な時代の中で揉まれて図太く生きる姿の面白さがあり、そういうのも楽しめました。
全体を通して、20世紀の前期から中期までの当時の中国の風俗、世間の雰囲気なんかも感じられるのですが、宦官ネタ以外のそういう部分も凄く良かったです。なんだろうか、ギリャロフスキーの「帝政末期のモスクワ」みたいな感じが凄く近いかな。
あと、コオロギでの闘虫(闘蟋ですがここでは「闘蛐々」と言うとか)のエピソードなんかはコオロギ薀蓄が細かくて興味深く、内容もそのまま少年漫画にできそうなノリで非常に楽しかったです。戦闘方法に技名が付いてたり、コオロギが気功を放って敵に触れずに吹き飛ばしたり(なにそれ)



「最後の宦官―溥儀に仕えた波乱の生涯〈下〉」。ちなみになぜか上巻も下巻も、Amazonでの登録で表紙画像が間違ってます。
「最後の宦官秘聞―ラストエンペラー溥儀に仕えて」。孫耀庭の本はもうひとつあって、それが別のインタビュアーが書いたこの本。
「最後の宦官 小徳張 (朝日選書)」。孫耀庭とは別に最後の宦官と銘打って出してる本がこの小徳張の本。西太后の宦官だった人です。


参照サイト
河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/index.html
宦官(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%A6%E5%AE%98
愛新覚羅溥儀(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E6%96%B0%E8%A6%9A%E7%BE%85%E6%BA%A5%E5%84%80
婉容(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A9%89%E5%AE%B9
温靖皇貴妃(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A9%E9%9D%96%E7%9A%87%E8%B2%B4%E5%A6%83
コオロギ(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%82%AE

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「中国の大航海者 鄭和 (清水新書 (052))」
「黒竜の城 上巻 (アッパーズKC)」



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